角松敏生 SEA IS A LADY日記8

角松敏生

皆さん、こんにちは!Takuです。今日で4月が終わり、明日からは5月です。天気が心配な今月でしたが、しっかりと春を迎え、桜も咲き始めています。

さて、今日は遅めですが角松敏生のメルマガ「拡散依頼」の内容をアップしていきます。

SEA IS A LADY日記8

皆さんお元気ですか?角松敏生本人です。

めっきり春らしくなった東京ですが、暑いの大好き人の私は、まだまだこの微妙な寒暖の差に納得がいかず、初夏はまだまだ!と、体調管理に気をつけております。

久々の全国ツアー&SEA IS A LADY 2017発売に向けての煽り!そしてツアー初日、神奈川県民ホール(まだチケットあります)完売に向けての特別プロモーション。どうぞコピペして拡散してください企画、第8弾!

ツアー初日まで書くぞ~の意気込みではありますが、ひとまず、ギターインストアルバムなので、マニアックなギターネタからスタートしております。

今回のツアーでの使用に向けて、角松敏生史上初のレスポールを、一般店舗のつるし(量販モデル)の中から「当たり」を探し出して購入しよう!という試み。

レスポールタイプギターの奥深さ、その歴史の真実とは?また、オリジナルヴィンテージを研究し尽くした、現在のGIBSONが誇るTRUE HISTRICというシリーズの精度とはいかなるものか?

僕のギターテック松山さん、ギタリスト鈴木英俊さんにオブザーバーとして参加していただき、楽器の迷宮、神保町に繰り出した!その顛末をお伝えしております。

題してレスポール探検隊日誌!本日はいよいよその最終回!

クロサワ楽器渋谷店の「I」氏という頼もしいガイドのもと、クロサワ楽器GIBSON専門店G-clubTOKYO御茶ノ水に潜入した我々は、様々な個体に遭遇したが、最終的にTRUE HISTRICの1960年モデルの一本1956年モデルを二本、という三本にまで絞り込むことができた。

この中から自分がこれぞというのを決めこまなければならない!100万円前後の高額商品だ。ミスは許されない!

ちなみに、60年モデル、ダークサンバーストと書いてきましたが、それは誤りで、正しくは、ビンテージ・チェリーサンバースト。

もともと明るい赤系のサンバーストが経年劣化で渋い色に変色した様子を現代の技術で再現したものだ。美術品の名贋作のようなものだ。

そう、TRUE HISTRICシリーズとは、お金をかけて当時の「当たり」の個体を材質から始め寸分たがわずに再現した、優れた贋作なのだ。

そしてそれは今、現在、ちゃんと弾けるもの!なのだ。

昨日も書きましたが、実際に音楽で飯を食っていかねばならぬものにとって、こと、エレキギターにおいては!優れた贋作は本物を超えるのである!即戦力にならぬ本物は博物館に寄贈すればいいのだ!と思うわけです。

そして最後に悩みぬいた、1956年モデルの二本。他の隊員たちが推奨する方を振り切って自分を信じて選んだ1956年モデルゴールドトップP90搭載のごく初期型のリイシュー。

こちらはヴィンテージ加工がほとんどない見た目新品。さぁ、その二本!どちらだ!すでに入店3時間はゆうに超えている。うーーーん、考える、逡巡する。

隊員の空腹感もおそらくハンパないだろう。今回、参加を依頼した際、神田でめちゃウマの中華の名店があるから、帰りにご馳走します!という触れ込みをしたので、おそらく隊員たちもそろそろ、心の中で「中華!中華!」と、叫び始めている頃だろう。時間に猶予はない。

60年モデルはそもそも僕が探していたスリムネックでいわゆる王道のレスポールハムバッキングタイプ。方や56年モデルは、音的に求めていた、ラリー・カールトンが初期に弾いていたように、
ジャズ・ブルースギター音色としての用い方を基本に据えた、本当のレスポールの初期型。ネックは太い。

ネックが太いのは嫌いじゃなかったのか?と聞かれそうだが、このネックは太いのにしっくりくるのだ。太さを感じさせない吸い付き感。

これは全体のバランスとかそういう微妙なものの連鎖が、最終的に僕の手にも弾きやすいと感じるようにさせてくれているのだろう。

とにかく、この二本は、同じレスポールでも、全く別のカテゴリー同士とも言えるだろう。

わかりやすく形容するなら、片や誰もが認める美形のファションモデル、街を歩けば男ども振り向く、颯爽と歩く姿は時代のヒロインそのもの!八頭身美人!帰国子女!

片やスーツも似合うが和服も似合う清楚で理知的な和風美人、NICE BODYというほどではないがその柳腰の魅力に惹かれる男子、星の数。実は苦労しているが、それがまた魅力となって染み付いている風!

こーんなタイプの違う魅力的な女性が二人、目の前に現れて、どっちを選ぶ?などと訊かれた日にゃぁ!あんた!OH! GUITAR IS A LADY !ウハ、ウハ、ウハ!

アホなことを考えながら、また悩む。

でも、まぁ、マジそんな感じなわけで(笑)

使いたい楽曲のタイプもきっと全く違うはずだ。個体の鳴りは甲乙つけがたく両方いいもので、かつ、使用目的(楽曲)が違う、どうすんだぁぁぁぁ!

目を閉じる。口の中が乾いてきた。僕はもう頭では結論の出ていることを言葉にするのをためらっているのだ。どうしよう、どうしよう・・・ええい!この小心者めが!ついに、背後についていた龍神様が吠えた!次の瞬間、くわ!と、目を開いた僕は、クロサワ楽器「I」氏に告げた。

「両方ともください!一括払いで!」

「でぇぇぇぇぇ~~~~!!」

隊員たちの驚きの声が店内に響き渡る。感心の声か、呆れた声か?

「I」氏、クールに「ありがとうございます」

刹那、彼の目がニヤリ・・・としたように思ったのは僕だけか・・・

よーわからんが。とにかく、「こんな素敵な君たちを目の前にどちらか選べ、何て・・僕ちん無理!二人ともおいで!」みたいな。

大正時代の旦那衆じゃあるまいし、そんな豪気な甲斐性は今の時代あるはずも認められるはずもないが(笑)て、女性の話ではない!10年に一度、良い商売道具を購入しよう!というそういう話だ。

僕が考えたのは、このよくできた個体二本、合算しても、200万は行かない。最初に提案されたクラプトンモデル150万也は超えるが、まだ想定内。

クラプトンのサイン入り一本200万を考えるなら、この素晴らしい二本を購入することが、どれだけ現実的なお得感であるか、かつ、今後の僕の音楽に反映できるかという将来性があるか、と考えれば、高い買い物ではない!

高い買い物ではない!高い買い物ではない!高い買い物ではない!

呪詛のように、心の中で反復する僕ちん。

無事、レスポール探検隊はお目当ての獲物をゲットできた!わけだが、さぁ、これでどうやって元を取るかであるが!

ひとまず、5月12日神奈川県民ホールを皮切りに始まるコンサートツアー、SUMMER MEDICINE FOR YOU vol3 ~SEA IS A LADY~のステージで使用されまくることは間違いない。

貧乏性の私が清水の舞台から飛び降りてゲットしたこの二本のLADY、しかと、見に来てくださいね。

このテキスト読んだ人は、その個体担いだ場面で、「隊長~~~」って是非、お声掛けください!よろしく願いいたします。

長文お読みいただきありがとうございました~~(おじぎ)

で、エピローグ

今回、この探検日誌で、ギターに疎い方でも、なんとなくそんな世界があるんだと、面白がってくれた方もいるかと思いますが、今回探検して思ったこと。

まず、ヴィンテージとは様々な意味合いがあって、飾っておくものと現在も使用できるものの違いは大きい。エレキギターなどは常に弾ける状態に保つためには、オリジナル部品を変えていかなければ続かない。そうするとビンテージの価値がなくなってしまう。市場で1千万単位で取引されるギターもあると聞くが、そういう個体はもはや使える個体ではなく、見る個体なのだ。

しかし、50年代ったら今や70年の歴史で、僕らが実際に使用できる憧れとしてみていたのは僕らが少年だった70年代。

そう考えると、僕の所有している ES335なんかは70年製なので、もう立派なヴィンテージ。

否、今回実際レコーディングで使用して、レスポールの扉を叩くきっかけになった鈴木くんの、おそらく、91年製カスタムショップモデルも2017年現在から見れば立派なヴィンテージである。

鈴木くんは十万するかしなかで買った中古、というが、名匠杉浦さんの手でリフィニッシュされたそれは、まさに世界無二の一品と言えるだろう。

そして、昨今のリイシューシリーズの制度の高さには驚いた。ビンテージで使えなくなったものをもう一度その時の状況に即して再現しようというわけだが、さぁ、ここで考えて欲しい。エレキギターってそんな大層なものか?電気だべ?そう、確かに電気的なものは今の技術の方が上である。

しかし、その当時は最新だが今となっては無骨なその技術から生まれた音だからこその味があるわけだ。

そういう音が、とりもなおさず、大衆音楽の原点を作り、礎となってきたのだ。そこに今の最新の技術を持って回帰しようとするのはおかしい話ではない。

というよりも、ここからが肝心な話だが、例えば、バイオリンのストラディバリウスが億単位の値段が付くのは、歴史の古さもさることながら、電気的な楽器ではなく、アコースティックだからこそ影響する経年の音の違いがあるからだ。

それは、それを作り出した、技術、そして素材と環境である。つまり、木材とその管理のことである。

そうして考えると、実はエレキギターもマイクを装着しながらちゃんと本体は木材なのだ。なぜなら、木材で作るのがやはり一番いい音がするからだ。

この日誌でも何度も、アンプを鳴らさず、生音で試奏するシーンが出てきましたが、結局は「当たり」の木材であるかどうかは、バイオリンと同じく、エレキギターもしかりなのだ。

その木材を70年前と同じにするというのが実はとても大変。

ここまで書けば、わかった人もいますでしょう。何故、精巧なリイシューモデルがそこまで高いのか。答えは木材。背景にあるのは、もちろん、戦後から続いた、木の乱伐採である。

50年代当時、バッさ、バサ、切っていた良い木が今では安価で手に入りづらいわけだ。そうして我々は、ことこう言ったエレキギターというジャンルの背景にも、いわゆる環境破壊が横たわっていた事実を知ることができる。

50年代は十万円台で購入できた同じ木材のギターが今は100万円する。この100万円はとりもなおさず、現在までの人類の罪と罰が乗っかった値段なのだ。

大げさに書きすぎましたが、まぁね、仕方がない。そうして人間は生きていくのだから。罪深い生き物だから。でも、こういう機会に、素材の意味を知り、その貴重性を知ることはありがたい話だ。

何故なら、今回購入したこの高価な買い物は歴史的事実をまた、次の世代に伝えられる格好のメッセージになるからだ。

大事に大事に弾き続けたい。そして、それでたくさんの人々に元気を与えられたら、その元気が今度は木々を守る気持ちにつながるかもしれない。そうして、木々たちも浮かばれるかもしれない。

縄文時代の人や、アイヌ民族、アメリカ先住民の方たちに共通の価値観がある。

自然から取らなきゃ、生きていけない。だから取る。でも自分たちが必要最低限の量しか取らない。取りすぎたらなくなってしまうからだ。

自然に最も敬意を抱く彼らの考えは、全く当たり前で、最も説得力のある考え方ではないだろうか。

いつか僕がいなくなった時、この二本のレスポールを娘に弾いていてもらいたい、いや、娘が興味なければ、娘の彼氏でも、誰でもいいや。

そういう時代に作られた個体に込められた、それ以前の歴史や人類の罪と罰、良心、そういったものをこの二本のギターに託したい。そう思わずにはいられなかった。

後記

空腹感いっぱいの隊員たちを従えて神田の街へ繰り出す!と、そういえば、今日は19時からDJオッシーさんと六本木で飲みながら昨年やったディスコライブの第二弾に関して打ち合わせする日だった~~!もう、19時間近。

オッシーさんに、直電。「ごめん、オッシーさん、中華ご馳走するから六本木じゃなくて神田きて!」

「はい!師匠!どこへでも!」くぅ、ありがとねぇ・・・本当にいい人。てことで、探検隊の打ち上げはDJオッシーさんと彼のマネージャーさんも加わり、大宴会となった。

場所は、そう!かの池波正太郎先生が愛した名店。神田「揚子江菜館」

決して敷居の高くない、庶民の店だ。

ここの上海風肉焼きそばと酢豚は、まぁ、エバーグリーンな絶品だわ。

うちの親父とお袋が戦後東京に出てきた頃からあるわけで、両親の憩いの場でもあったろう。僕も幼児の頃からたまに連れてきてもらっていたので、もう体に染み付いている。神田とか下町系はほんと!うまい店多し!

隊員や、オッシーさんも焼きそばと酢豚に感嘆。あっちゅう間にはける。もう、その間、話はギター談義、咲く、咲く、それを横で、楽しそうに聞くオッシーさん。

「いやぁ、奥が深いすねぇ~面白いすねぇ~」日ごろDJの機材やオーディオにうるさいオッシーさんも完全に隊員状態。

まぁ鈴木くんが言ってましたが、「最後の方にゃ、もう三十万という商札が安く見えましたものね、完全に金銭感覚狂ってきますよね」

そう、クロサワG-clubは、ギター好きにはまさに神田という魔のジャングルにそびえ立つ魔の迷宮。その魅力に耐えられる御仁は一度足を運ぶといい。あ、渋谷店もよろしくね!(笑)

今回非常にお世話になった渋谷店のインディオ、じゃない、ガイドの「I」さん。

ギターの構造など事細かな情報提示ありがとうございました。また3時間に及ぶ試奏におつきあいありがとうございました。

ちなみに!「I」さん、実は「I」さんじゃないのだ。個人特定されたら迷惑かな、と思ったので
仮名「I」さんなのだ。ご本人は書いちゃってもいいすよ!と、言ってましたが、一応ね。

でも、この日記で風態を書いたので、もしクロサワ渋谷に行って、この人かな?と思う人がいたら、声をかけてみてください。「あなたですか?角松にレスポール二本売りつけた人は?!」

おしまい

次回からは、アルバムの内容やツアー内容などまたまた色々書きます~

引き続き、ツアー初日までよろしく。

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「TOSHIKI KADOMATSU Official Mail Magazine Vol. 259発行」より転載

角松敏生

Posted by Taku