角松敏生 SEA IS A LADY日記9
Takuです。角松敏生のメルマガ「拡散依頼」を予約投稿の上、一部転載しております。
アルバム発売日(5/10・水)とツアー初日である神奈川県民ホール公演(5/12・金)のカウントダウンの日数が掲載されていましたが、そのまま転載するとズレが生じるため、以下に掲載してみました。
- 「SEA IS A LADY 2017」発売まであと10日
- ツアー初日「神奈川県民ホール」まであと12日
昨日(4/29・土)時点で、メルマガの日記は16回目なのでゴールデンウィーク後半に入る頃には3連投以上はせずに済むと思います。
SEA IS A LADY日記9
みなさん、お元気ですか?角松本人です。久々の全国ツアーが始まります。
初日横浜神奈川県民ホール完売スタートを目指し書き始めました日記。
いきなりマニアックなギターネタ、レスポール探検隊無事終了しましたね。
さて、今日からは徒然なるまま書きますね。いきなりのマニアックネタでしたが、ギターに詳しい男性諸氏などはもう、ど真ん中のネタだったので、ニヤニヤしながら見ていただいたようで、また、ギターに詳しくない方もよくわかんないけど面白い!角松さんたちがギターキッズに戻ってワクワク買い物している姿が目に浮かぶ!といったようなありがたい感想もあったようですね。
「ようですね・・・」てのは、わたしゃSNSやらないので、周りの人たちが教えてくれるんですよ。
でもって中には、全然何の話だかわからない、つまらない、長い、ちゅう人もおられるようで、まぁ~そういう方は実際のメルマガ会員とかじゃなくて拡散で見た外野的な方なのでしょうから無理してみるこたァないので、よろしくお願いいたします。こちとら激務の間で死ぬ気で書いてますんで(笑)
しかし、そのせいでかなり高速で長文書いていまして、乱文になってしまい申し訳ないです。いずれどこかで再校正清書して出すか(笑)
まぁでも、とにかくね、そういう様々な反応聞くにつけ、本当に色んな人がいて、その色んな人相手に35年飯食ってきたんだよなぁ、と妙な感慨がこみあげましてね。
同じように僕の音楽を好いて聴いてくださる人が皆同じ性格、同じ価値観とは限らないんですよね。なので、求めていることも違う。
僕のような立場の方は皆さん、同じだと思いますが、求められるその全てに答えていけるわけはないのでね。聴く側は常に選択が自由なので、興味持ったり持たなかったり。
しかし、こちらはファンを選べませんから大変、ちゃぁ大変ですが、それが我々の生業の難しいところでもあり、面白いところでもあります。
ちょいと話、それますが、昔ながらの洋食屋、とかってよくあるじゃないですか。そういうお店で生き残っているところって、昔ながらの店外不出のレシピ、伝統の味を守り続けながら、新しいメニューにも時代に即して対応する工夫とか、そういうのがあるから生き残れるのじゃぁないでしょうか。
僕も、もしかしたら、そういう昔ながらのレストランみたいなもので、また、そうなりたいと思っているのかもしれないです。
お客さんはお客さんの人生があるので、その都合で、住むところも、好みも、行きつけの店も変わります。
ですが、これは僕も経験がありますが、ふと何十年ぶりかで昔行きつけだった店に行くと、なんとまぁまだそこにあるじゃないですか、と言うような場合、その時は嬉しいですよね。
その店はきっと僕が離れている間でも、ずっと変わらずに通い続けてくださるお客さんと年月を共にしてきたのだなぁと思います。
伝統を重んじながらも、旧態依然とするわけではなく、常に新しいことにチャレンジして、コアな顧客の皆様と共に試行錯誤してきたからこそ、それが信用、信頼となって、顧客の皆様が情報を広げてくださる、そうして、さらに新規のお客さんも取り付けて、そこにあり続けられたのかもしれないなぁ、と思うのです。
自分の年齢、環境が変わってしまっても、昔ながらの場所に変わらずにあり続けてくれる店とか、いいですよね。
どんなに時が流れても、自分を受け入れてくれる場所。僕は皆さんにとってそんな場所になれたらなぁと思うのです。こんなショートストーリーを考えてみました。いかがでしょう。
小話
1981年夏
あぁ、今日も暑い、卒業試験まであとわずかだというのに、全くやる気が起きない。なのに、バイトはしっかりやらなきゃと思うのは何故かな。
安い時給でもやっただけの見返りがある実感こそが行動力につながるのかな・・・そういえば、大学の講義なんて、これ理解したらなんか見返りというか、いいことでもあるのかと、よく思う。
イデア論?無知の知?うーん、僕には屁理屈にしか聞こえないんだけどな・・・などと、とりとめもないことを考えながら、ひたすら皿を洗う。
「おーい、たかしー、昼飯行っていいぞ~」
「あ、は~い」
もう、こんな時間か。道理で腹が減った。夏はさすがにバテて滅入るが、昼休みには唯一の楽しみがある。行きつけのレストランの絶品オムライスだ。この街でもう10年近くも続けている店で、昔ながらの味が嬉しい。
カラン、
店の扉を開けるともう、これぞ洋食屋の匂い、と言う奴が胃袋を刺激する。この匂いには記憶がある。そう、幼い頃、たまに母に連れて行ってもらった、デパートの食堂の匂いだ。
洋食だけではなく、和食やラーメンなんかもあって、食券で買うんだよな。そう、そこには子供の夢、お子様ランチ、という名の魔法の食べ物があって・・・てな感じで、記憶の中にある匂いと云うものは、強烈だなと、この店に来るといつも思う。
「いらっしゃい」
気さくな店主なのだが、こだわりは深いらしい。
「オムライス」
「はい」
時間つぶしに、壁に掛けられた見慣れたメニューを眺める。すると、何やら新たに書き加えられている。鳥の唐揚げ。
「ねぇ、マスター、揚げ物やらないんじゃなかったの?」
「え?うん、まぁね、油モン好きじゃねぇからな。でも、なんか、何、時代のニーズ?」
そう言って店主は、けけけ、と笑った。そうして、続けた。
「これがさ、やってみると奥が深くて面白ぇんだよな」
「なーんか、この店、揚げ物似合わないけど」
「ま、そう言わずに。食ってみるか?」
「マスターが言うなら仕方ねぇ」
・・・・・・・・・・
「どうだい?」
「うめぇ、うめょマスター、まぁでもオムライスにゃかなわないななんたってマスターのオムライスは絶品だからね」
1年後冬
クリスマスなんて嫌いだ。たかが1日や2日のために1ヶ月も前から大騒ぎして、終わったらあっちゅうまじゃねぇか!でも、せっかくのクリスマスだ、彼女に電話したら、バイトで忙しいときたもんだ。
体良く断られたかな。まぁいいや。今日は昼飯抜きだったから、腹が減った。あの店に行こう!
カラン・・
「いらっしゃい」
「唐揚げ定食」
「最近、めっきり唐揚げだね」
「クリスマスだしね!てか、マスターの唐揚げは絶品だよ」
「ありがとよ、でもイブの夜に一人で唐揚げかい?けけけ」
「うるせー!」
30年後春
昨年、ようやく課長に昇進できたのはいいのだが、またまた転勤。とはいえ、今回は栄転と言っていいかもしれない。長年の地方暮らしからようやく故郷である東京の本店に帰ってこられたのだから。
今日は妻と、この春高校に進学を決めた娘と3人、久々に家族揃っての休日、僕の思い出の街を散策している。
「へぇ、いいところね。駅前は賑やかだけどちょっと入ると緑が沢山あって」
「だろう」
「ねぇ、パパ、まだ?おなかすいたよ」
「待ってろ、もう少しだ。何しろオムライスと唐揚げが絶品なんだ」
と、言いながら、もう30年も訪れていなかった店が今もあるとは疑わしかった。なに、なかったらMのハンバーガーにでも行けばいい。
すっかり変わってしまった街並みだが路地を一つ内側に入ると、まだ変わらずに残されている風情があってほっとする。
ここに酒屋があって、その先なんだが・・・何か風景が違う。あ、酒屋がコンビニになっている!これが時の流れか。
おそらく十中八九、あの店はあるまい、ほとんど諦めていたのだがその先にあの懐かしい看板が見えてきたではないか。
「お!あったぞ!ここだ、ここだ!懐かしい~」
「なんでもいいから腹減った」
口の悪い娘だ。父の感慨がわからぬか!わかんねぇだろうな・・・あの頃のままの看板。
木彫りの看板が店の扉の上から下がっていてそこにちょうどライトが当たるような作りで、昔はモダンで新しいと思ったものだ。今や完全にいわゆる昔ながらの風情というやつだ。
しかし!あの扉はなかった。自動ドアになっていた。これも時の流れであろう。マスターは元気だろうか、僕を覚えているだろうか?
店に入る
「こんにちは~」
「お~たかし、懐かしいなぁ、元気だったか」
一瞬時が戻ったのかと思うほどマスターは変わらなかった。
僕はもう白髪まじりになってしまったのだけれど、マスターの風情は30年前と変わらなかった。僕がマスターに追いついただけ、そういう感じだった。
けれど、嬉しかった。何もかもが変わって行く中で、こうして変わらないものがあるというのはありがたい。何だか掛け値なしに元気をもらえる、そんな気がした。
「マスター、オムライスに唐揚げ!」
「おお、懐かしいね、あの頃に戻ったみたいだ。かしこまりました。奥様とお嬢さんは?」
「おい、お前ら、ここはオムライスが絶品なんだ!それ食え!」
「いやよ、私はこれ、このパエリアください」
「あーお腹減った、私は、うーん、あ、ラザニアください」
はぁ~~~??パエリア?ラザニア?スペインとイタリアかぁい!
「おいおい、マスターいつの間にそんな洒落たメニューが・・・」
「そうね、なんか、何?時代のニーズ?」
そういうとマスターは、けけけ、と笑った。
みると、壁掛けのメニューが幾重にも重なりものすごい数の料理が書いてあった。時代とともの多くのお客さんの顔を見つめ一人でも多くの人を楽しませようとしてきた結果なのだろう。
そしてそれはまた研鑽となりマスターの腕につながって行ったのだろう・・・それは出された料理を食べる家内と娘の表情を見ればわかる。
「なにこれ、このパエリアすごくおいいしい!絶品!」
「このラザニアもやばーい、絶品、また来ちゃう~」
「でしょ!」
などと言って顔をほころばせるマスターの、けけけ、という笑い声が店内に響く。
ふと見ると、あの懐かしい、ドアベルが店の内側に吊るしてあった。おそらく、もう何年も音を立てていないであろう、その錆びたカウベルを揺らしてみた。
カラン・・・
一瞬、あの夏が見えたような気がした。
おしまい
僕は、ここに登場する店のような存在になりたいし、なるための努力をしなければと思っています。
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「TOSHIKI KADOMATSU Official Mail Magazine Vol. 260発行」より転載
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